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少女マンガの中途半端な感想。すべてネタバレですのでご注意を。
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ただの恐怖漫画かと思ったら意外にも懐の深い作品です。現代文明に警鐘を鳴らす問題作とも言えるし、文庫の帯にある「SF大作」というのも間違ってないしもちろんホラーでもある。

まず感じたのが人間の怖さ。
極限状態におかれた時の人間の豹変ぶりは怖い。特に大人たち。いつもニコニコして気のいいおじさんだったはずの関谷が食料を独り占めするために包丁を振り回したり、頼りになるはずの先生たちが精神に異常をきたして自殺を図ったり殺人鬼と化したり。子供たちもやがて殺し合いに発展したりしますが、大人たちの腰抜けぶりはひどいです。嫌なのは、こうなるのも無理はないな…と納得できてしまうところですね。自分が同じ状況になったとして、関谷や先生たちみたいにならない自信がない。自分がどれだけ「自分の生きる世界」という狭い枠組みにこだわって生活しているか、また普段どれだけ建前やきれいごとで塗り固めているかということを思い知らされます。
2巻で砂漠の中からプラスチックが出てきたところではちょっとドキッとしました。あれ、これ30年以上も前の漫画なのに今と同じこと言ってる、と。人間がいつの時代も変わらないのは昔から言われていることですが、プラスチック処理の問題については30年あれば進歩してていいはずのことなのに、いまだに同じことを言い続けているという絶望的な進歩のなさ。
高松くんとお母さんの母子愛は泣ける。お母さんが「翔、どこにいるの!?」と半狂乱で泣き叫ぶ姿には思わず同情します。高松くんが危機的状況に陥っていると察知するや、真夜中だろうが人が見ていようが助けようと奔走するお母さんは、ハタから見たら完全に精神病患者ですよね。入院させられていないのが不思議なほど。けれどストレプトマイシンを探して歩きながら「どんな恥ずかしい思いをしてもクスリを手に入れるわ!」と言っていることからも分かるように精神状態はいたって正常なんです。このエピソードは何が異常で何が正常かを考えさせる、そういう問題提起も兼ねているんだとしたら深い。
怪虫とか伝染病とか不気味なキノコとか未来人類とかホラー要素もバンバン出てくるし、とにかく盛りだくさんなこの漫画。

1巻の解説のオッサンが爽やかにバラしてくれたおかげで最後、高松くんたちが元の世界に戻れるわけじゃないことを初めの段階で知ってしまってちょっと残念だったのですが、でもまぁよく考えてみれば冒頭の高松くんの語りでも予感できるっちゃできますね。ということは最初から作者は元の世界に戻るという結末を考えていなかったんだな。
まぁシュールとみせかけて一番妥当なのかもしれない、この終わり方が。
元の世界に戻ってくるってラストは無難に収まってるようで、でもじゃあ向こうの世界で死んだ子たちとか見えかけた希望の光はなんだったのって話になるもんね。

いや~予想外に真面目な感想になってしまった。
でも「漂流教室」は確かに名作だと思いました。
ただ、あの赤白縞々服の漫画家が描いたものだっていうのがどうにも想像できない。
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生まれも育ちも北海道だがジンギスカンはあまり好かない。
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